今回は伝え方の話だよ。
伝え方というのは、ヒアリングやプレゼンに限らず一般的な話ね。
その一般的な伝え方のそれらの根っことなる、基本のキの資料の書き方の話ね。
仕様書や報告書、企画書などは相手に理解されなければ意味がないし、理解されても了承されないと成功ではない。
少なくとも相手に理解されるには、相手のフォーマット(思考のクセ)や言葉遣いに合わせて伝える必要があるよ。
逆に自分独自の言葉遣いなどをしたら、伝わるものも伝わらないって意味ね。
なぜ相手のフォーマットに合わせる必要があるかというと、認知負荷を下げるためだよ。
認知負荷ってのは、人が相手からインプットされた情報(言葉)を処理し、情報に意味を与える際の負担や負荷のことね。
簡単に言えば、相手の言葉を解釈するときの大変さということね。
情報の取得、処理、記憶、応用などの人の認知的な活動にはメモリーが必要となるけど、それは限られている。
認知負荷が高い状態では、情報処理や課題遂行において困難やストレスが発生するんだよね。
例えば、話がよくわからなくて、つまらなく感じるとか、「ちょっと聞いてなかった、もう一度説明してもらっていい?」と言われたり。
この状態がメモリーが使い切られていて、脳に余裕がなく、認知負荷が高い状態ってことね。
認知負荷を減らそう
認知負荷は主に以下の3つのタイプに分類されるよ。
この3つの負荷を下げることが、コミュニケーションで大事なことね。
- 複雑性起因
ある課題自体が持つ難しさや複雑さによる負荷。
課題の性質や要素の関連性が複雑な場合に認知負荷が高くなる。 - 冗長性起因
情報の提示や課題の設計、構造の問題によって引き起こされる余分な負荷。
冗長な情報、複雑な手順や手続き、混乱を招く表示方法が認知負荷を高める要因となる。 - 新規性起因
新たな知識やスキルの獲得や適用に伴う負荷であり、学習の効果や成果に直結する。
これら3つのタイプがあるけども、要はあなたの世界観・情報=言葉遣いと、相手の言葉使いが異なるとき、相手はまず、自分の言葉使い(自分の世界の表現のクセ)を理解するワンステップが必要となってしまうんだ。
そのうえで、自分の言葉使い(世界の表現方法)に翻訳して、そのあと意味付けなどの処理をして初めて理解できる。
乱暴にいえば、この言葉使いの変換負荷を認知負荷というんだ。
自分が発した新しい情報は、そのままの形で相手に理解され、記憶されるわけじゃない。
リンゴは、みかんやナシと同じ果物の仲間・・・という具合に、新しい情報であるリンゴを既存の記憶=みかんやナシと紐づけないと記憶できないよ。
新しい情報というのは、無人島のように、本島からポツンと独立して記憶することは脳の仕組み上できないからね。
リンゴの例だと、みかんやナシに紐づけて理解、記憶するんだ。
これができないとリンゴがどうなるか?
リンゴがなかったことにされるか、すでに頭の中にある、ナシのことだろうと脳の中で誤変換されてしまうよ。
脳は基本的に省エネが好きなので、認知負荷が高い情報(例:リンゴ)を受け取ると、楽をしようとするよ。
例えば、既存の記憶(脳のキャッシュ)から似た情報(例:ナシ)を持ってきて「わかった!」と思ってしまう。
なので、相手に正しく理解してもらうためには、認知負荷の低い伝え方を使う必要があるってことね。
認知負荷の低い伝え方とは?
では、認知負荷の低い伝え方とは何か?
それは、相手の世界観を使って伝えるということ。
すでに相手がなじみのある情報に追加したり、相手の既存の情報との差異で説明する。
別記事で、ゼロベースで話すとは言いましたが、いきなりあなたの世界観の言葉でゼロベースで話すと、ゼロのままになって伝わらないよ。
そうではなくて、相手の世界観を理解、確認から始めるのが、ゼロベースという意味ね。
1+1=2は当たり前かもしれませんが、相手の世界観では1+1=3かもしれないからね。
これは冗談じゃなくて、x+yで、xyが十分大きい時は20の固定値になるというルールがあってもおかしくないからね(クワス算)。
だから、1+1の答えは何か?という基本的なところから、相手の世界観を理解していく。
そして、理解した相手の世界観にチョイ足しを繰り返して、新しいあなたの情報を理解してもらう。
これがゼロベースという意味であり、認知負荷が低い伝え方の「考え方」だよ。
日本語は特に認知負荷が高い
日本語はハイコンテクスト言語なので、同じ文章でも人によって違う解釈ができるね。
例えば「すみません」という言葉の意味を考えるよ。
1.文字通り、ごめんなさいという謝意
2.良いものをもらっちゃって、「すみません」という「ありがとう」
3.お店で店員さんを呼ぶときの「すみませーん」という「ちょっといいですか?」
などの複数の意味があるよね。
システムの要件定義でいえば、「会計業務」といった場合、総勘定元帳だけの狭い範囲なのか、債権債務、固定資産のような補助簿を含むのか、いやいや財務会計だけでなく、管理会計を含むのか。
このように、さまざまな解釈があるね。
今、ちょっと説明しただけでこれだけの解釈のバリエーションがあるってことは、1時間の会議、その会話の解釈のバリエーションは本来無限といってもおかしくないわけ。
だから、会議で質問がなかったから、伝わったと思うのは安直すぎなんだ。
実際、そういうつもりじゃなかったとか言い訳してくる人も多いしね。
世界は言葉で出来ている
これはコンサルタントの基本だけど、相手のこと=世界観をしっかり理解することがコンサル業務の第一歩ね。
世界観とは何かというと、言葉です。
「世界」は言葉でできています。
例えば、スマホという言葉、名前を付けないと、スマホをスマホと認識できない。
つまり、スマホという言葉がなければ、スマホは存在しないものになる。
わかりにくいかもしれませんが、流れる景色をボーッと見ている時、1つ1つのモノを見てないよね?
あくまで「景色」を見ているわけで、「ビルの看板」「木」「道路」を1つ1つ見てるわけじゃない。
「景色」を見ている時、「景色」という言葉が頭の中にあり、言葉に対応するように脳が目からインプットされた情報を処理しているってこと。
別の言い方をするなら「ビルの看板」「木」「道路」という言葉を思い浮かべながら「風景」は見れないってことね。
これが「言葉」を割り当てないと、「認識」できないという意味ね。
なので、相手の世界観を理解するということは、相手の言葉使いを理解するということ。
言葉遣いを理解するとは、相手の「言葉」が何を指しているのか?を理解するということ。
同じ言葉=日本語をつかっているからといって、同じ世界にいるとは思わないこと。
相手は別の言語を使っているという気持ちでコミュニケーションをすることね。
相手の言語を理解する方法
言葉でできているのはわかった、じゃぁどうやったら相手の世界観を理解できるか。
別の世界観=別の言葉=別の言語であれば、例えば英語を理解するとき、どうすればいいかな?
そう、自分も英語を使うということですね。
まずは、相手の言ったことを復唱する。
復唱することが、相手の言葉、例えば英語の理解の第一歩になるね。
話すときはとりあえず、意味はわからなくても英語で話してみる。
赤ちゃんもとりあえずママの言葉を復唱することから始めるからね。
このように、相手が使っているのは別の言語だと思って、相手の言葉使いに100%あわせて会話する(努力をする)。
この時、あなたの言葉の使い方は一切でてこないよ。
これを自分を薄めると言うよ。
相手のの思考パターン、言葉使い、資料の構成や、フォント、色使い。
これらを相手の会話やそれを取り巻く環境(例:社内ドキュメント)から理解して、「相手の世界観の中で」新しい情報を伝える。
1つだけ自分を入れていいのは、この新しい情報の「内容」だけで、「表現」は相手の既存の世界観、言葉遣いでおこなうよ。
もちろん、一朝一夕には相手の世界観を理解するのは難しいけど、まず、最初の一歩として、わからないと思った言葉は確認する。
こういう理解でいいですか?と相手に確認し、一般的な言葉の定義なのか、社内固有の言葉の定義か、相手だけの定義かを確認するってことね。
ズレてるかも?と思ったら、ズレを放置しない、確認するってことね。
コンサルは「知っている」と思ったらオワリ
何事も「わかったと思いこまない」、疑って念のため確認する。
もちろん、知らないことは知らないとハッキリ言う。
無知の知といいますが、私は知らない=無知を知ることが成長の第一歩だからね。
これらを行っていくことが相手を知る、最初の第一歩だよ。
僕はコンサルタントになって数十年たつけど、経験すればするほど「私は知らない」姿勢が重要だなと思うね。
逆に「私は知っている・わかっている」をアピールしてくる人が本当に多いなぁとも思っちゃう。
その道のプロから見れば「わかってないな」とすぐにわかってしまうんだけどね。
でも、わかってないとわかる人が少ないと、多数決で負けるのも事実だから、世の中は複雑だよねぇ。
AIに勝てる、コンサルの価値とは?
閑話休題。
コンサルをアドバイザーと勘違いしている人は多いですが、「知っている」からコンサルではないんだよ。
知っていることをただ吐き出すだけならAIがやってくれるからね。
コンサルは「知っている」と思ったらそこで試合終了です。
なぜなら、僕は「知らない」と思うから、問いを立てるわけで。
この問いのスキルがコンサルのスキルなんだよね。
情報の多さがコンサルの良しあしを決めるのであれば、ChatGPT(AI)には勝てません。
でも、そうはならない。
なぜなら、問いを立てる力=コンサルの力だから。
ChatGPTに対してどういう問いを投げるのか。
だから、AI時代でもコンサル(ホンモノ)は必要になるってこと。
だから「私は知らない」を忘れずに、常に言葉に疑問を持つ。
疑問はすぐに質問する、解決する。
このサイクルを回せば回すほど、問いを立てる力が身に付くし、自分以外の世界観の引き出しが増えていく。
様々な人々の世界観を理解するために、自分は知らないマインドでどんどん問いを立てていく。
「ちょっとは自分で考えろ」と言われても、どんどん質問する。
ウザがられるくらいでちょうどいいんだよ。コンサルは。
当たり前を当たり前と思わない。
ウザがられるくらい、質問マニアになろうぜって話。
要は、無関心をやめて、興味を持って、対象を自分の言葉で説明できるようにしておく。
それが、相手を理解する秘訣だし、理解スキル自体を向上させるコツだ。
p.s. あくまで「質問」をするのがコンサルなんだよね。
こうだ!と断言しているコンサルはあれ、ポジショントークだからね。
他に「こうですよねぇ?」という共感や自分の価値観の押しつけになっているコンサルも多いからね。
これを読んでいるみなさんは、このようなコンサルを区別して観察してみてね。
では、今日はここまで。